樋口 保成 | |
神戸大学理学部数学科 | |
応用数理講座 教授 | |
確率論教育研究分野 | |
ホームページ | E-mail: higuchi@math.kobe-u.ac.jp Tel: 078-803-5620 |
何を研究しているのか:
・個人的な動機
確率論はいろんな分野に応用されていますが、
とくに統計物理学への確率論の応用に興味を持っています。
最初のきっかけは高校生のときに気体分子運動論で確率的な考え方を使ってボイルーシャルルの法則を導けることに感動したのがはじまりです。
経験則として受け入れていたことが、
論理的に説明できると言うことを知ってとても嬉しかったことを覚えています。
現在の研究は、もう少し数学よりになっていますが、
確率論の統計物理学への応用が基本的なテーマです。
( 残念ながらそれでも分野が広すぎて私一人では理解できないことが多いのですが。)
・研究の内容( ここ10年程の研究 )
大学院をでてからいままでずっと、
相転移の確率論的研究をして来ました。水がなぜ0°Cで氷になり、
100°Cで水蒸気になるのか、なぜきまった温度で急に状態を変えるのか、また、
そのとき、微視的にはどのような事が起こっているのか、
そういうことを理論的に説明する学問があります。
一般にこれを相転移の理論と呼んでいます。このような現象を説明するため、
様々なモデルが考えられていますが、
数学的に研究することのできるモデルも沢山あります。
最近では代数学とこれらのモデルとの接近が話題になっていますが、
確率論とこれらのモデルとの関係はもう30年近くになります。
ここ10年間はデタラメに並べた金属と非金属の原子がいつ伝導性を持つかと言った話のモデルについての研究をしてきました。
このモデルをパーコレーションモデルといいます。
数学的には2次元まではかなりのことが説明できるのですが、
現実世界の3次元の話はまだまだ難しいことが多く、
今後の研究が待たれるところです。 ・研究の成果
イジングモデルというモデルは相転移の数学的モデルの代表です。
最も簡単なモデルといわれていますが、このモデルは温度により、
二つの状態を取ります。混乱状態と秩序状態です。簡単にいうと、
平面上に無限に広がる碁盤の目を考えて下さい。これを平面格子と呼びます。
この各々の目(直線が交差するところ)に○か×を勝手に置きます。
隣の目と状態(○か×)が同じ時のほうが安定なのですが、
温度が高いと各々滅茶苦茶に並べる方が安定になり、
温度が低いと隣同士○×がそろう方が安定になります。
このモデルではある温度を境として無茶苦茶に並ぶ混乱状態と秩序状態とが入れ替わります。私の研究ではこの混乱状態から温度を下げていったときどの様にして秩序状態に移行して行くかについて○×の並び方にある種の規則性があることを証明しました。
どんな形がどの様に成長して行くかなど、くわしいことはまだ全然説明できませんが。
メッセージ:
確率論は現実と数学とを結ぶ面白い学問です。 サイコロや順列だけを問題にしているのではありません。 解析学の深い部分とも密接に関連しており、 純粋数学としても今世紀大きく発展してきました。また、工学や生物学、 最近では経済学への応用なども活発になされており、 数学としてだけでなく、 数学の応用としても幅広い問題を抱えている魅力のある分野です。