Updated on January 18, 2008
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Univariate specializations of the bivariate Appell functions satisfy linear ordinary differential equations of order at most 4. We investigate the cases when these ordinary differential equations are simple (pullback) transformations of Euler's differential equation for Gauss hypergeometric series. Correspondingly, we find various linear identities between Appell's and Gauss hypergeometric functions.
概均質ベクトル空間(PV)とゼータ関数の理論は、1960年代に佐藤幹夫氏と新谷卓郎氏により創始された。近年の研究で、その中でも放物型と呼ばれるクラスのPVが、整数論的な観点からも他分野との関わりからも特に重要であることが明らかになってきている。この講演では、$G_2$型と呼ばれる放物型PVを例にとり、整数論や表現論・保型形式論との関係について説明する。また今後考えられる発展の方向についても触れたい。
確率論における各種の極限定理は、(1次元)分布の収束を証明してから次のステップとして確率過程としての収束(関数型極限定理)を示すことが多い。しかし実は、初めから確率過程としての極限を考える方が逆に易しくなる場合もある。今回は、確率過程の見本関数をパラメータ表示することによって得られるタイプの極限定理の手法を紹介する。
一次元ブラウン運動は原点を出発しても原点に何度も帰って来る再帰性を持つ。その標本路を、原点を出発してから再び原点に戻ってくるまでの道の断片に分け、これらをエクスカーションと呼ぶ。ブラウン運動のエクスカーションの確率的振る舞いは、伊藤清の研究によって、道の空間に値をとるポアソン点過程として特徴付けられることが明らかにされた。
本講演では、拡散過程の極限定理の背後に、エクスカーションの極限定理があることを解説する。また、笠原─渡辺によって近年得られた、極限が退化する場合の揺らぎ極限定理のからくりを、エクスカーションの極限定理によって理解する試みを紹介する。
波動方程式あるいは一般に双曲型方程式には、初期関数の特異性が時間の経過と共に方程式固有の法則で伝わっていくという現象がある。このことを特異性の伝播と呼ぶ。特異性の伝播の問題は、1960 年代から 1980 年代にかけて線形の方程式に関する研究が、1970 年代後半以降に非線形の方程式に関する研究が行われた。ここでは、波動方程式などのごく簡単な形をしている方程式に限って、特異性伝播の問題を線形方程式の場合と非線形方程式の場合に概観する。また、最近の講演者によるささやかな寄与についても紹介する。
ポテンシャルが球対称であるようなシュレーディンガー方程式の固有値問題は変数分離法により常微分方程式のそれに帰着できる。例えばクーロンポテンシャルの場合はこの方法で固有値や固有関数を求めることができる。一般の球対称なポテンシャルの場合はそのような厳密解は期待できないため、近似法を試みることは一つの自然なアプローチであろう。ところが代表的な近似法の一つである WKB 近似法を適用しようとすると困ったことが起きる。変数分離の際に角運動量項が現われ、その角運動量項の持つ特異性のために WKB 法による解の近似が破綻してしまうのである。
この問題への対処法として古くは 1937 年の Langer による研究があるが、やや人工的であることもあって、その後最近にいたるまで様々な形で研究がなされてきた。この講演ではクーロンポテンシャルを例に、この問題が新しい WKB 法である完全 WKB 解析(exact WKB analysis)では極めて自然に扱えることを(その紹介も兼ねて)説明する。
ベクトル空間、アフィン空間や射影空間の余次元1の部分空間の集まりを超平面配置とよぶ。与えられた超平面配置から得られる様々な構造や不変量の間の相互関係を調べることが、超平面配置を扱う人々の共通のテーマである。今回は超平面配置から決まる対数的ベクトル場の層の構造について話す。特に、
0. 与えられた超平面配置に対して、何が重要な情報なのか?
1. 対数的ベクトル場とは何か、それから何がわかるのか?
2. 特殊な超平面配置に対して、対数的ベクトル場はどのようにふるまうのか?
について紹介したい。さらに時間が許せば、Postnikov-Stanley による「リーマン予想」と呼ばれるルート系の組合せ論に関する予想と、それに対する対数的ベクトル場からのアプローチも紹介したい。
After an introduction to (arithmetic) quantum chaos and hyperbolic surfaces with constant negative curvature $-1$, I present as an explicit example the Maass cusp forms for Hecke triangle groups and present a new connection to the associated classical geodesic "billiard" system. The reason why I put the word "arithmetic" in parentheses is that the Hecke triangle groups are not arithmetic in general but exhibit many "arithmetic" features.
保型形式の周期とは、代数群上の保型形式を部分代数群上で積分して得られる複素数であり、これらはL関数の特殊値と関係があることが多くの場合に知られている。
本講演では、特殊直交群に対して周期に関する予想(Gross-Prasad予想の精密化)を解説し、時間が許せば(保型表現の重複度に関する)Arthur予想との関連についても述べる。
(京都大学の池田保氏との共同研究)
Many problems from geometry are characterized as the solutions of integrable systems of PDE. They can be formulated conveniently as maps into certain loop groups, which are then subject to general techniques for producing solutions. Examples to which this framework has been applied include harmonic maps from a Riemann surface into a symmetric space, constant mean curvature surfaces in space forms, special Lagrangian surfaces in complex projective space and isometric immersions of space forms. In this talk I will try to give an idea how this works with simple examples.
数理論理学におけるモデル理論を他の分野に応用する場合、モデル完全な公理系のモデルが使 われることが多い。定義可能な集合がわかり易いが、表現力もそこそこある場合が重要なようで ある。このような公理系はその自然な部分公理系のモデル随伴理論(model companion)となって いることが多い。典型例は体の公理系に対する代数的閉体の公理系である。ただし、与えられた 公理系に対しモデル随伴理論がいつもあるとは限らない。これまで他の分野に応用された例を 紹介し、また、ある状況におけるモデル随伴理論の存在条件について議論する。
フリーの数学ソフトウエアおよび文書の集積プロジェクトである knoppix-math やその成果物の DVD の紹介,およびこのプロジェクトへの神戸 大学からの寄与を紹介します.
射影直線から3点をのぞいた空間の基本群からできるモチーフが整数環上の不 分岐な mixed Tate モチーフを生成するという Deligne-Ihara 予想へのアプ ローチとして,基本群のモチーフから構成的に得られるモチーフを研究するこ とが重要になってくる.Grothendieck-Teichmuller 群の表現のアーベル圏を 用いて統一的に性質のよいものを構成する手段をテクニカルな部分をのぞいて のべる.
流体は多数の分子から構成されている.流体の運動を記述する巨視的な方程式
であるナビエ・ストークス方程式は,分子の微視的運動を記述するボルツマン
方程式から導くことができる.流体力学の数値シミュレーションにおいて,通
常はナビエ・ストークス方程式などの巨視的方程式が用いられる.その解法と
して有限差分法などの格子法,Smoothed Particle Hydrodynamics(SPH)とよば
れる粒子法などが多用されている.
分子の微視的運動を計算機で追跡することは,ボルツマン方程式を解くことと,
基本的には同等である.そのような手法としてモンテカルロ直接法(Direct
Simulation Monte Carlo method=DSMC)がある.DSMCは工学的には希薄気体の
運動をシミュレートするのに使われている.
私はDSMCにある修正をほどこし,希薄気体ではなく連続流体を扱うことができ
るようにした.この手法を私は分子流体力学 (Molecular Hydrodynamics=MH)
と呼んでいる.MHを用いて,ナビエ・ストークス方程式を解くことができる.
MHが他の既存の差分法などと大きく異なる点は,
1) 陽的時間積分を行うにもかかわらず,時間刻みの長さに制限がない.通常
はクーラン条件で規定される時間刻みがあり,これを超えると不安定になる.
2) モンカテルロ法の特徴として,多数回の計算を行い,そのアンサンブル平
均をとることにより,解の精度はいくらでも上がる.
ここでは分子流体力学法をさまざまなテスト問題に適用し,それが実際に有用
な手法であることを示す.
代数的微分方程式は,その一般の解の動く特異点が高々極であるときパンルヴェ 性をもつと言われる.微分の階数が2までの時,ポアンカレ,フックス,パン ルヴェたちはこのパンルヴェ性をもつ常微分方程式の分類を行った.この講演 では、このパンルヴェ性についての代数幾何学的な考察を行い,パンルヴェ性 が結果として,初期値空間(相空間)のコンパクト化にある種の制限を付ける 事,それが森理論等の極小モデルの理論と関係があることを述べたい.時間が 許せば,高階の場合の野海・山田系や,笹野系との関係,またモノドロミー保 存変形的な観点との関係と問題点を述べたい.
With Jorgen E. Andersen we constructed modular functors form conformal field theory. The construction depends heavily on the classical theory of compact Riemann surfaces. Form the modular functor we can construct topological quantum field theory (TQFT). We conjecture that our modular functor for sl(n,C) gives he Reshetikhin-Turaev TQFT.
凸なグラフで表されるアファイン極小曲面についてのBernstein型予想 (S.S. Chern 1977) が、最近 2次元のときと(Trudinger-X.J. Wang; A.M. Li)、 3次元のときに(A.M. Li)解けたのでその解説。懸案の問題の1つで 両者の方法は異なり、Li 氏のものは幾何的。