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万年筆の青インクの本当の色

万年筆の 青インク(Blue Black, ブルーブラック) は, 筆記の後数年で茶色に変色してしまう. しかし, この茶色の方が本来の色なのだ...というはなし.

ペンやプリンタのインクには 「染料インク」 と 「顔料インク」 がある. 大まかに云うと, 「染料」 は有機色素を液に溶かしたインク, 「顔料」 は無機色素を液に微粒子として懸濁させている. 多くの場合, 染料は顔料よりも退色しやすい. 日光の紫外線があたると数年で退色してしまう. マジックインク, サインペン, さまざまな印刷物などは陽にあたるところに置くと, 数年で退色して読めなくなってしまう.

顔料の例では, 墨汁がある. 炭の細かい粉を練りこんであり, さまざまな古物で, 数千年保つ実績がある. また, 鉛筆も炭を練り込んで焼結したものなので, 同様に保つと思われる. さまざまな色の岩を砕いた顔料では, 石器時代の壁画などが残っており, これも数千年〜数万年は保つ.

では, 万年筆のインクはどうなのか.

万年筆の場合, インク詰まりを避ける必要から, 染料インクが使われることが多い. 通常の染料インクでは, 筆記後数年で退色しはじめる.

「カーボンブラックインク」 は例外で, 墨汁と同様の炭を使用しており退色がない. 水に溶けることも無いので 水で滲むこともほとんど無い. 半面, 水に溶けない成分があるのでペン先が詰まりやすい.

「ブルーブラックインク」は通常のインクとは異なった仕組みで筆跡を残す. 筆記直後に 「見える」 青い色は筆記後5年くらいで退色してしまう. しかし, このインクには鉄分が含まれている. 筆記直後はこの鉄分は透明で見えないが, 空気中の酸素で次第に酸化され錆になってゆく. 錆になると顔料インクと同様に, 変色しにくい. つまり, 筆記直後の青色は単なるつなぎで, 茶色は本来意図されていた最終的な色なのだ.

ブルーブラックインク はこのように染料インクだが, 空気に触れることで顔料の成分ができてゆく. だから, フレッシュなインクを使わないと顔料成分でペン先が目詰まりしてしまう.


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