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蛍光灯のちらつき(フリッカー)が見えるのは何故か

古くなった蛍光管では, 放電が不安定になるため 点灯が不安定になってちらつく. しかし, 新品の管で安定していても,ちらつきが見える事がある.

  1. 蛍光管の機構
  2. 蛍光管の色合い
  3. 蛍光灯の発光周波数,ちらつき(フリッカー)
  4. ちらつきが気になる場合にはどうするか(直管型)
  5. ちらつきが気になる場合にはどうするか(円環型)
  6. インバーター式の蛍光灯
  7. コンピュータのディスプレー
  8. カメラのシャッター時間に注意
  9. 白熱灯
  10. バイオライト
ちらつく理由:
  1. 管内の放電が不安定 (気温が低い, 管が古いなど)
  2. 交流なので放電が断続的

蛍光管の機構

要点:
  1. 蛍光管は放電管の一種.
  2. 放電管はグロー放電型とアーク放電型に分類できる.
  3. 蛍光管は放電の光をそのまま利用するのではなく, 放電で作った紫外線を蛍光物質で可視光に変えている.

蛍光管は管内に低圧(水銀柱 1mm 程度)のアルゴンと水銀蒸気を封じ込めている. 通常の大気圧は 水銀柱 760mm 程度なので,大気圧の 1/760 くらいの圧力という事になる.

アルゴンの一部は放射線によって電離してイオンになっている. 電圧をかけると, 加熱されたフィラメントから熱電子が放射され, アルゴンのイオンを核にしてグロー放電が始まる. ネオンサインでは, グロー放電で封じ込めた気体に応じた色の光が出ることを利用している.

電圧が高くなるに従ってアーク放電に移行する. アーク放電では気体が高温のプラズマとなり光を発する. 水銀燈, ナトリウムランプ, アーク灯ではこの光をそのまま利用している. プロジェクタの光源はアーク灯を用いる. 指の脂肪分が焼き付いて寿命が短くなるため, 素手での扱いは避ける. また,アーク溶接・アーク炉では高温を利用して金属を融かす.

蛍光管ではグロー放電によって水銀から紫外線が出て, それが壁面に塗られた蛍光物質で可視光に変えられる. 紫外線はガラスで遮られるので外には出ない.

放電管の電流に対する抵抗は放電の状態によって極端にかわってしまう. そのため, 蛍光灯では, 電源に直接つなぐと電流が不安定になってしまうので安定器を直列に接続する. 安定器は単なるコイルだがこれで電流の急激な変動を抑えることができる. 蛍光器具がブーンと 100-120Hz で唸ることがあるが, 主に安定器の振動が聞こえている. (コイルに電流が通ると磁場が発生して材料に力がかかるため振動する.)

蛍光管自体は安定器で変動を抑えられているが, それでも, 電源ラインや回りの空間に電気的なノイズを盛大に発散している. 高速のLANケーブルの布設などでは考慮する必要がある.

蛍光管の色合い

蛍光管内の紫外線を可視光に変換する蛍光物質はメーカや製品によって異なる. そのため, 製品によって赤みを帯びたり, 青みを帯びたりと様々な癖がある. (この度合を色温度と云う.)

さらに, 蛍光管自体からの光を見ると白色に感じたとしても, 光の成分(スペクトル)が太陽光とはかなり異なる. そのため,物の色合いが,その吸収スペクトルとの兼ね合いで, 太陽光の下とは異なって見えてしまう. 最近の蛍光管では, 以前の蛍光管と比較して, スペクトルが改善されており, 色の再現性(演色性)がかなり良くなっている.

蛍光灯の光が直接目に入った場合の光の色合いと それが物に反射/吸収されて目に入る場合の色合いは別問題. 蛍光管に使用されている蛍光物質の配合によっては, 蛍光灯の光が自然な白色に近く見えても, それで照らされた物の色合いが不自然に見えることがあるので, 色合いが重様な場合には, 白熱灯を用いるのが良い. さらに, 白熱灯の系統でも クリプトン球やハロゲン球を使うと色合いが日光の元に近くなる.

蛍光灯の発光周波数,ちらつき(フリッカー)

要点:
  1. 人間の目のちらつきへの感知の限界は 50Hz〜60Hz 程度.
  2. 商用電源は 50Hz〜60Hz で供給されている.
  3. 蛍光管は電源の2倍の 100Hz〜120Hz で発光している.
  4. しかし, 蛍光管の一方の電極の近くに注目すると, 電源に対応する 50Hz〜60Hz の周期になっている.
  5. これによって, 照度のむらが 50Hz〜60Hz でおこり, 目で感知できることがある.

商用の電源の周波数は関東で 50 Hz, 関西で 60Hz で供給されている. 蛍光管全体としては, 電源の交流の正負の電圧が高くなるタイミングで放電が起こり光を出す. そのため, 蛍光灯は 100-120Hz で光る事になる.

目の周波数応答の限界はだいたい 50-60Hz 程度になっている. (周波数特性に個人差がある.) そのため 100 Hz 以上で光る蛍光灯に通常はちらつきを感じない.

ただし, その光り方は陰極側と陽極側で均一ではない. 交流でドライブすると電源電圧の正負の入れ替わりに応じて, 水銀イオンが管内をフラフラと移動する. 電離した水銀イオンが陰極側に移動するため陰極側の方が明るい. そのため, 管の一方だけを見ると 50-60 Hz で光る事になる. 直管の蛍光管だと, 注意してみると管の端がちらついて見えることがある. 関東と関西で電源の周波数が異なるので, 人によっては旅行や引越しすると,ちらつき方が違って感じられる事がある. 特に,電源周波数の低い関東では, ちらつきが見える人が多い. デスクランプでは照明と目の距離が近いためちらつきが目に入りやすいので, 直管型の蛍光灯の使用は避ける方が良い.

ちらつきが気になる場合にはどうするか(直管型)

要点:
  1. 逆並行に電圧をかけるようにするとちらつきが少なくなるが, 市販の製品はそうはなっていない.
  2. 改造は簡単

直管式の蛍光灯でちらつきが気になる場合. 直管式だと, たいてい, 複数本を並行に列べて配置してある. これらの蛍光管の接続をしらべると, たいていは, 電圧が同方向にかかるようになっているので, これを逆並行にかかるように内部の接続を修正してやると良い. これで, 蛍光管の発光の片よりが打ち消されて, ちらつきが見えなくなる.

2本の直管型蛍光管を組み込んだ照明器具を改造してみたが, ちらつき感が無くなり, 読書の目の疲れが少くなった.

ちらつきが気になる場合にはどうするか(円環型)

要点:
  1. 4端子のコネクタを捻って挿せるなら, そうすると良い.

円環状の蛍光管ではちらつきはあまり気にならないはずだが, 同心円に2本の管をつけるものなら, 直管型と同様に逆並行に電圧がかかるようにするとちらつきが減る.

電圧を逆並行にかけるようにするには, 4端子のコネクタが電線でつながっているタイプでは, 適切に, コネクタを捻って差すと良い.

端子が固定具を兼ねているタイプでは, 端子を捻ることはできないので, 内部の接続を変更することになる.

インバーター式の蛍光灯

要点:
  1. インバータ式蛍光灯器具はちらつきが少ない
  2. トランスの唸りも少ない
  3. 電球型の蛍光灯はインバーター式

インバータ−式の蛍光灯では商用電源の交流のままではなく, 内部で独自の交流を作り出して蛍光管に与えている. このとき, 商用電源よりも高い周波数をもちいる. 手元にあるインバータ式蛍光灯を調べてみると約70kHzでドライブしていた. (電源周波数 50Hz-60Hz の1000倍程度になる.) 高い周波数で蛍光管をドライブしているのでちらつきは感じない. 蛍光管が古くなったときの瞬きも抑える効果があるように思われる.

周波数が高いと組み込むトランス(安定器など)を小さくできるというメリットもある. 周波数を可聴域よりも高くすると, 動作音を感じなくさせる意味でも効果があると思われる.

蛍光管の残光効果などもあって 20% 程度明るくなって, 消費電力は同じらしい.

電球型の蛍光灯はコネクタ部分にインバーターが組み込まれているので, 他のインバーター式の器具と同じに考えて良い.

コンピュータのディスプレー

要点:
  1. ディスプレーの垂直同期周波数は 電源周波数(50-60Hz) よりも高くする

垂直同期周波数が電源の周波数と近い場合には, 画面と照明の干渉でちらつきが感じられる事がある. このような場合には, 周波数の設定を少し(できれば高周波側 70Hz あたりに)ずらすと良い.

明暗に対する目の周波数応答から考えると, コンピュータのディスプレーの垂直同期周波数は 50-60Hz よりも高い方が良い. また, テキストの編集作業などには, 残光時間を長くしたタイプの CRT が適する.

液晶では残像時間が長いのであまり影響は無いと思われるが, 商用電源の周波数よりも少し高くしておくと良い. 特に最近は, 応答性の良い液晶も出ているので... ゲームやビデオ再生を重視して残像時間を短くしたディスプレーが多いが事務作業という目的からは問題がある.

デジカメのシャッターに注意

症状:
  1. 撮影すると,見ための明暗とは違う不自然な絵になる.
  2. 動画の場合, 明暗のちらつき感がある.
要点:
  1. 明るい場合でも室内のポートレート撮影ではストロボの使用を推奨する.
  2. フリッカー軽減モードが信用できそうなら, 使用してみる.
  3. 蛍光灯のちらつきの影響を除くには, 露光時間は 1/60 以上, できれば 1/30 以上にする.
  4. シャッター速度を速めにして蛍光灯の照明で写真を取ると面白い効果がでるかも.
  5. 白熱灯やインバータ式の蛍光器具なら, シャッターとの干渉はほとんど無い.
  6. 蛍光灯の下でも, 他の光源を併用するとフリッカーを軽減できる.

蛍光灯と云うと色温度の問題が気になるかも知れないが, ここでは点滅する光源との相性という観点から考えてみる.

カメラのシャッターのタイミングと蛍光灯の光るタイミングのずれ具合によって, 妙な写り方をすることがある. 点滅するライトとシャッターが干渉すると, 人間の目で見たものとは別の映像が取れてしまう.

人間の目や照度計ではちらつきが平均されて見えているが, カメラの場合 1/125 秒など, 瞬間的な露光で画像を残す. このタイミングがちらつきの明るくなった時点か, 暗くなった時点かで, 照らされ方が変わって来る. 家庭用の蛍光管の場合, 100Hz-120Hz の明るさの変化に加えて, 光る箇所も(1秒に50-60回)移動するので, 瞬間的には影のつき方なども移動してしまう.

ここまでは, フィルムカメラ も デジタルカメラ も同じだが, デジカメ の場合さらに, 色ごとに光センサからの読みだしのタイミングが違うため, この光量のずれが色ずれになって表れることがある.

明るい方がシャッタースピードが速くなる傾向があるため, 明るさが足りていても, 問題の解決にはならない. 明るい場合でも室内のポートレート撮影ではストロボの使用を推奨する. ストロボを使用しない場合, 対策としては, 点滅周期よりも十分に長くシャッターを開けると良い. 蛍光灯の場合 1/60-1/50 よりも長時間. できれば 1/30 程度あると, 2周期分のちらつきが平均される. シャッタースピードを直接コントロールできない場合, 絞りを閉じるか, ISO 感度を下げることで調整する. っていうか, 素直にストロボを使う.

インバータ式の蛍光器具なら, 点滅が速い(周波数が高い)ので, シャッターとの干渉はほとんど無い. 白熱灯なら, 明暗の変化が少ないので, シャッターとの干渉はほとんど無い. 色温度の問題もあるので ハロゲン球 を使う.

白熱灯

要点:
  1. 白熱灯はちらつきが少ない
  2. 色合いを気にするなら ハロゲン球を使う

フィラメントに電気を通して白熱させて発光させるものをここでは白熱灯と云うことにする. 通常の白熱電球に加えて, クリプトン球やハロゲン球 も同様に考えて良い.

白熱灯も交流の電源電圧に同期して(100-120Hzの)明暗の変化があるが, フィラメントの熱容量に相当する残光があるのでフリッカーはほとんど感じない.

通常の白熱灯では, 色温度が低め(黄色っぽい)なので不自然に感じられる事もある. クリプトン球やハロゲン球を使う照明器具の方が, 色温度が高めで太陽光に近い感じになる. 細かな色合いを気にするなら, ハロゲン球の照明器具を使う. 指の脂肪分が焼き付いて寿命が短くなるため, ハロゲン球を扱う場合は, 素手での扱いは避ける.

省エネのため白熱球の生産は廃止の方向.

バイオライト

"バイオライト" というクリプトン球に電圧安定器をつけた製品もある.

電圧を安定させているのでちらつきが無い. 通常の白熱灯よりも更に光度が安定している. また, 電圧を高めて, 色温度を少し高めに設定している. 通常の白熱灯だと黄色みを帯び, 蛍光灯だと青みを帯びているが, バイオライトだとこれらよりも自然に感じる. 通常の白熱灯よりも色が良い. その結果, 目が楽になり, 読書の疲れが少くなるような気がする.

クリプトン球を高めの電圧で動作させるので, 電球の耐久時間が短い.


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