確率 1/10 で当たるんなら 10 回やれば当たる?


たまに上のようなことを耳にするが 確かになんか正しそうに見える. 箱の中に当たりくじが1個, はずれが9個入っているとしよう. 引いたくじは箱の中に戻さないとすれば, 10人が くじを引けば必ず誰かが当たる.

しかし, 引いたくじを箱の中に戻すとすれば, どうなるか? 確率は毎回 1/10 である. これを 10 回するので 一回でも当たる確率は (1/10)×10 で1とするのは誤りである. 正解を求めてみよう.

まず, 一回も当たることがない, すなわち, 一回も当たらない 確率を求めよう. それで出た答えを全体の確率, すなわち1から引けばよいのである.

一回外れる確率は 9/10(=1-(1/10)). これを 10 回行うので, すべて外れる確率は (9/10)10となる. あとは1からこれを引いて,

1-(9/10)10=0.651322…≒65.13%


となり, 確率は半分強となる. 意外と少ない?多い? 参考までに, 1/20 を 20 回などの確率を書いておく.

当たる確率
1/2 を2回75.00%
1/5 を5回67.23%
1/10 を10回65.13%
1/20 を20回64.15%
1/50 を50回63.58%
1/100 を100回63.40%
1/256 を256回63.28%
1/512 を512回63.25%
1/1024 を1024回63.23%


おまけ


では, 小さい確率のものを何回もやったら確率はどうなるか? を考えてみよう. つまり, 確率 1/n で当たるくじを, n 回引いたら, どれぐらいの確率で当たるか? である. 上で, 10 でやったものを, 文字 n とおいて やればよいので, 確率は,

1-(n-1/n)n


となる. これを p(n) と置こう. n がどんどん大きくなっていったときこの値は何に近づくか 求めてみよう. こういう値のことを極限値と呼ぶ. ここではこれを lim p(n), n->∞ と書くことにしよう.

高校の微分積分(今は数学III?)を習っていれば 求められる. まず, 自然対数の低 e は

lim (1+(1/n))n, n->∞


で定義されていたことを思い出そう. 上の式と見比べるとなんか似ている. 上の式をうまく変形してこの形が出てくるようにすればよい.

p(n)=1-(n-1/n)n =1-(1/(n/n-1))n =1-(1/(1+1/(n-1)))n


となるので,

lim p(n), n->∞ =1-1/e


となる. e=2.718281828459045… なのでこの値は 0.63212… と求められる.




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