Updated on Apr 7, 2021
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本講演では多変数特殊函数の典型例である対称函数(多項式)の研究を, 講演者の最近の研究を中心にして, 紹介する. 特に, 1) 古典的な Pieri 公式の変奏, 拡張にあたる基本公式 (互いに相異なる同時可換な微分 (or 差分)作用素族{DA}, {DB}とそれらの同時固有函数族{fA}, {fB}への作用 DAfB , DBfA を明示的に書き下 す基本公式) 2) 対称函数の特殊値といった topics とその応用について, 専門外の方にも楽しんでいただけるようにお話ししたい.
本講演では、まず3次元ユークリッド空間内の絡み目の不変量であるMilnor不変量の定義および性質を紹介する。そして、絡み目のMilnor不変量を、絡み目の一般化にあたる溶接絡み目に拡張する方法について述べる。
この講演では$A_1$特異点から定まるネクラソフ分配関数について紹介する. これは特異点解消上の枠付き連接層のモジュライにおける積分を係数とする母関数である. 特異点解消として二つ, 極小解消とスタック的な解消, つまり, 射影平面を位数$2$の巡回群で割った商スタックを考える. これら二つの特異点解消から定まるネクラソフ分配関数の関数等式について紹介する. ひとつは, 伊藤-丸吉-奥田が予想した関数等式であり, もうひとつを$(-2)$ blow-up formulaとして提案したい.
「L関数の低い位置にある零点(low-lying zero)たちの分布は, ランダム行列理論から生じるコンパクト古典リー群の固有値分布と一致するだろう」というKatz, Sarnakの予想がある. この予想をサポートする現象は, Dirichlet L関数や楕円モジュラー形式のスタンダード保型L関数など, いくつかの場合に確認されてきた. 本講演では, 総実代数体上のGL(2)のコホモロジカル既約カスピダル保型表現の族の対称べきL関数に着目し, そのL関数の零点分布と対称2次L関数の特殊値との 関係について論じる. 本講演ではさらに, 今回得られた結果を踏まえて, low-lying zeroの分布とL関数の特殊値の関係に関する予想も提示する.
多変数超幾何積分の積分路全体は局所系係数の急減少ホモロジー群として書ける。従って積分路の良い基底を求めることが問題となる。本講演ではまず古典的な停留位相法による基底の構成を振り返り、その基本性質を述べる。後半ではGKZ 系の観点からの講演者によるアプローチを紹介し、その応用を述べる。
固体壁が水や空気といった粘性流体の流れに与える影響の理解は、理学・工学の両分野において基本的な問題である。一方で、現実の流体が接する壁面は、巨視的には滑らかなようでも、微視的な粗さを持つ境界としてモデル化されることが多い。本発表では、粗面付近の Navier-Stokes 流に対する境界層補正を用いた高次展開を紹介し、その応用として流体力学における Navier 壁法則に関係した数学的結果をいくつか解説する。
物理学で研究されてきたゲージ理論のクーロン枝に対して,近年,Braverman-Finkelberg-中島はその数学的定義を提唱した. クーロン枝はその定義からアフィン代数多様体だが,この構成ではクーロン枝の座標環の非可換変形(量子クーロン枝)と,差分作用素のなす代数への埋め込みが同時に得られる.さらに,クーロン枝が箙に付随して定義される場合には,退化したMacdonald作用素およびその変種が現れる.この講演では,こうした事実について紹介し,箙に付随する量子クーロン枝をCherednik代数(退化ダブルアフィンHecke代数)やある種の量子群と同定する結果について述べる. この講演の内容は中島啓氏,およびBraverman, Finkelberg, Kamnitzer, 中島, Webster, Weekes各氏との共同研究に基づくものである.
点付きRiemann面のモノドロミー表現のモジュライ空間は指標多様体と呼ばれています。Simpsonはこの指標多様体のコンパクト化に関する予想を、Hauselらはそれらの混合Hodge構造に関する予想を提出しています。本講演の前半はこれらの予想が成り立つ例を紹介します。後半は安定放物接続のモジュライ空間について述べます。特に、安定放物接続のモジュライ空間の族はモノドロミー保存変形の方程式の相空間と考えることができますが、その上のHamiltonianについて述べます。
分散型波動現象を記述する非線形シュレディンガー方程式の解のダイナミクスについて幾つか紹介します. 可積分構造を伴う特殊な非線形項や初期値の大きさを制限するなどした場合とそうでない場合について触れます. 波動エネルギーの定性的性質を共鳴現象によって解説したいと思います.