生体物理化学
( 2単位)
Biophysical Chemistry
担当教員
配当年次
開講学期
助教授 橘 秀樹
3
後期
授業のテーマと目標
第1部では、生体分子や関連する種々の分子の反応の速度論・平衡論を, 放射性同位元素 の壊変, 生体分子の解離会合, 酵素反応などを例に解説する.第2部では、エネルギー論的 取扱いの方法を身近な物質や解糖系, 酵素の遷移状態を例に解説する.第3部では、生体分 子のバルクならびにミクロな立体構造の解析に用いられるいくつかの手法の原理と実際を 解説する.
授業の内容と計画(予定)
第1部
  1.反応の速度論, 一次反応, リニアスケールと対数スケール.放射性同位元素, 半減期,
生物研究への応用.細胞増殖.
  2.二次反応, 半減期の濃度依存性.諸量とその単位, 次元.可逆反応, 平衡.蛋白質へ
のリガンドの結合・解離.
  3.酸素吸着.圧力について.ヘムの構造と性質.ミオグロビンとヘモグロビン, 協同性
パラメター.
  4.MWC モデル.ヘモグロビンにおけるアロステリック転移の実体.グロビン蛋白質ファ
ミリの分化.
  5.逐次反応, 律速過程, 定常状態.酵素反応の現象論, ミカエリスーメンテン型反応機
構.
  6.ミカエリス定数, 回転数の実例. L-B plot.測定値の精度と回帰の問題. Eadie plot,
  Hofstee plot.高分子へのリガンド吸着, Scatchard plot.
第2部
  7.エネルギーの諸形態.内部エネルギー.エンタルピー.標準エンタルピー変化.エント
ロピー, ミクロな定義.気体と高分子での例.
  8.エントロピーのマク ロな定義.標準エントロピー変化.熱ポンプ.機械の仕事効率,
  生体での効率 .自由エネルギー, 自発変化.
  9.化学ポテンシャル, 平衡定数と標準自由エネルギー変化.解糖系.「高エネルギー」
リン酸化合物.van't Hoff式.蛋白質と核酸の立体構造安定性と転移.
10.温度, 分子の並進, 回転, 振動.反応座標, 遷移状態, 活性化エネルギー.酵素反応
遷移状態の例. 生体分子における活性化エネルギーと反応速度.
第3部
11.生体分子の bulk な構造研究法.遠心法, 慣性力と粘性力, 拡散, 沈降.球状分子と
鎖状分子.クロマトグラフィ, 固定相と移動相, 分配と移行, 理論段数.電 気泳動法.質
量分析法.
12.生体高分子の局所的構造研究法.分光学的手法.電磁波の概説.電子のエネルギー準
位.光吸収とパイ電子系.生体分子の構造変化と色変化.吸光係数.迷光とartifact.吸
収スペクトル例とその解析.
13.蛍光分光法.励起, 緩和, 遷移.蛋白質の内在蛍光とミクロ環境.蛋白質・核酸とい
ろいろな蛍光プローブ.化学発光と生物発光.偏光と生体分子のダイナミクス研究.
14.線二色性, 円二色性.核酸のらせんの多型とCD解析.蛋白質の 2 次構造・3 次構造の
  CD 解析.
15.核磁気共鳴法.局所磁場と化学シフト.パルス法, 多次元 NMR, 距離情報.蛋白質の
三次元構造の決定.
履修上の注意
先行科目: 生化学基礎 .
数学, 物理, 化学の基本を身につけていることが望ましい
成績評価方法
毎回の講義に演習問題があり、それを基に小テストを数回行い、さらに期末テストを行う.
教科書
講義ノートを用いる
参考書
中垣正幸・寺田弘・宮島孝一郎著 生物物理化学 (南江堂),
Dawes., E.A.(中馬一郎他訳) 生物物理化学 (共立全書),
メツラー (今堀・上代・西塚・山川訳) 生化学 (東京化学同人),
アトキンス (千原・中村訳) 物理化学 (東京化学同人),
アトキンス Physical chemistry for the life sciences (Oxford University Press)
渡辺格・島内武彦・京極好正編 生物物理化学実験入門I, II (培風館),
理科年表 (丸善)
学生へのメッセージ
解析法や測定法はいわば自然の秘密との戦いの道具です.戦いに勝てる十分条件では ありませんが、それらを使いこなし真の力とするには、最初に良質の理解をすることがと ても大事です.
その他
オフィスアワー: 金曜16時〜17時.
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