特別講義「火山学と科学ジャーナリズム」 ( 1単位)
Volcanology and science journalism
担当教員 配当年次 開講学期
非常勤講師  鎌田浩毅 3・4 後期

授業のテーマと目標

理系の自分は社会に出てから、どうやって生きてゆけばよいのか?学生院生なら誰でも持つ疑問と迷いに対して、明快に答えるのがこの講義です。 私の専門である「火山学」研究現場のエピソードを交えながら、社会への道筋を作ってくれる「科学ジャーナリズム」に焦点を当て、諸君が自分の能力を十分に活かすにはいま何をすればよいか、を具体的に指南します。 特に、科学者・技術者として良い仕事をする戦略と社会貢献の仕方について、「科学の伝道師」としての私の経験を紹介します。たとえば、現在たずさわっている火山防災に関するアウトリーチ(啓発活動)のおもしろさを取り上げ、科学者と社会のあるべき関係を考察してみます。 本講義では、徹底的に学生院生の立場に立って、聴講生のニーズを吸い上げたライブの講義を展開します。みずからが的確に判断し、論理を構築し、明晰に発表することを目標にします。
授業の内容と計画(予定)

講義の具体的な項目は以下の通りです。
火山研究の戦略と戦術とは何か?
阿蘇山 -火山学者漱石誕生!?
富士山 -美しさも期間限定?
雲仙普賢岳 -自然は人知を超えている
有珠山 -噴火予知成功!
三宅島の七不思議 -科学は万能ではない
火山弾に追いかけられる! -伊豆大島1986年噴火
噴火の仕組み -地球科学の手法と考えかた
噴火のさまざまなすがた -地球は多様だ!
火山がつくってきた動く大地 -プレート・テクトニクスという地球科学革命
新しい地球の見かた -プルーム・テクトニクスが新しい地平を拓く
東海地震・東南海地震・南海地震の三連動と津波から身を守るには
アウトリーチと科学ジャーナリズムの戦略と戦術
講義では、ビデオやコラム記事などを用いて、ヴィジュアルな理解と論理的思考の双方を達成することを目指します。
さらに、講義中には「感想・質問・講義の改善点」を紙に書いて出してもらい、私の考えをすぐに回答します。この学生とのやりとりが、講義のユニークな魅力の一つです。学生の生の声を取り入れながら双方向の意志疎通を図り、話の内容をどんどん変えてゆくのです。その結果、学生にとって、本当に意味のある授業時間が、毎年創り出されます。
よい授業とは「一期一会」で、学生も一緒に創るライブの講義なのです。講義の時間が「死んだ時間」から「活きた時間」になる瞬間です。「活きた時間」については、下記の『成功術 時間の戦略』第1章を参照して下さい。目からウロコが落ちる話がたくさん聴け、考えることの楽しさに目ざめることは確実です。去年は1000人もの学生が、学問するための、生きるための貴重な指針を得ました。とにかく、私の標語である「おもしろくてタメになる」授業をします。
講義の方法論については、下記のURLを参照して下さい。
http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~kamata/KyoudaiShinbun2006.htm
履修上の注意

先行科目: 地質学,岩石学 . 後行科目: 地殻テクトニクス .
講義では、地球科学や火山学を学んでいない学生院生にも、完全に理解でき る配慮をしています。 できる限り全回数の講義に出席して、頭をフル回転することを期待しています。
成績評価方法

成績評価は、講義の終わりに提出するレポートでおこないます。楽しんで授業に参加し、自分の頭でしっかりと考えて有意義な時間を過ごし、個性あふれるレポートを提出した者には、確実に単位が与えられます。要するに、講義を聴いて自分にとって意味のある指針が得られたかどうか、が最も大事です。 なお、講義中の私語は禁じているので、教室にはいつも真摯に学ぶ良い雰囲気が流れています。授業への参加状況と試験結果を総合して評価する.
教科書

『火山はすごい -日本列島の自然学』鎌田浩毅 著(PHP 新書) ISBN:4-569-62226-7
『地球は火山がつくった -地球科学入門』鎌田浩毅 著(岩波ジュニア新書)
ISBN:4-00-500467-9
『成功術 時間の戦略』鎌田浩毅 著(文春新書) ISBN:4-16-660443-0
『ラクして成果が上がる理系的仕事術』鎌田浩毅 著(PHP新書)
ISBN:4-569-64845-2
上記4冊の教科書をもとに講義を進めますので、必ず持参してください。
『火山はすごい-日本列島の自然学』と『地球は火山がつくった-地球科学入門』の2冊は、これまで研究上に出会ったエピソードをふんだんに盛り込んだ本で、火山学者のものの考えかたや手法などを分かりやすく解説しています。
『成功術 時間の戦略』は、理系の若手に向けて「いかにして身を立てるか」について書いたもので、私の経験に基づく戦略と戦術をすべて披露しました。
『ラクして成果が上がる理系的仕事術』は、私の提唱する「アウトプット優先主義」を実践する本で、「いかにして早く論文を書き成果を上げるか」についてのテクニックを、具体的に教授した本です。『成功術 時間の戦略』が理念編(基礎編)とすると、こちらは技術編(応用編)という位置づけです。
このほかに参考書として、下記を挙げておきます。
『科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式』鎌田浩毅 著(講談社プラスアルファ新書) ISBN:4-06-272288-7
科学ジャーナリズムの原点である文章作法に関して、新しい見かたを提示した本です。いわば「科学者の文章読本」です。
その他

オフィスアワー: 授業後.

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