場所:九州大学理学部3号館3311室
Sturmfels-Weismantel-Ziegler (*1)は、整数計画問題を解く Conti-Traberso (*2) アルゴリズムを整数格子上の問題に拡張した。CT アルゴリズムの特徴は、 整数格子から自然に生成される 2 項式イデアルのグレブナ基底を用いることである。 彼らのアルゴリズムにより、拡張された整数計画問題と2 項式イデアルの 性質の間に興味深い関係(最適解とグレブナ基底による正規形計算)が見出せる。 本発表では、彼らの結果をできるだけ平易に紹介するとともに、符号理論への 応用(*3)を紹介する。符号理論の主な問題の一つに、軟判定最尤復号問題と 呼ばれる問題がある。この問題はそのままでは、CT アルゴリズムが適用できない のだが、ちょっとしたトリックを使うことにより適用ができ、その結果、 符号理論と 2 項式イデアルの間にも同様の関係が現れることがわかる。 keywords: integer programming, soft decision decoding, Groebner basis, binomial ideal, integral lattice (*1) : B. Sturmfels, R. Weismantel and G. Ziegler, "Groebner bases of lattices, corner polyhedra and integer programming", Beitr age zur Geometrie und Algebra, No.36, pp. 281 -- 298. (*2) : P. Conti and C. Traverso, "Buchberger algorithm and integer programming", AAECC-9, vol. 539 LNCS, pp. 130--139, Springer, 1991. (*3) : 池上 大介, "An algebraic maximum likelihood decoding algorithm and a sub-optimum decoding algorithm for linear codes", 博士論文, NAIST, 2003. (+α) おまけの発表 「Agda + Computer Algebra system」 対話型定理証明/プログラム記述システム Agda と、Agda を計算代数システムに接続する プラグイン機構を紹介する。 Agda は、定理証明のためのシステムという一面と、対話型プログラム記述の ためのシステムという一面を持つ。この発表では、定理証明システムとしての 機能に注目する。Agda では、ユーザが命題とその証明を記述することができ、 その証明が数学的な意味で妥当かどうか (矛盾していないか、使ってよい仮定と公理 のみから正しく推論しているかなど)を計算機が検証する。しかし、この検査は計算時間と メモリの両方を大量に必要とするという欠点がある。もし、計算を確かめる部分を 外部の計算代数システムに頼むことができれば、この欠点を軽減することが期待できる。
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