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UTP(10/100/1000BASE-T)ケーブルの構内配線と成端処理

以下では, イーサネット(10BASE-T, 100BASE-TX, 1000BASE-T)接続のための UTP ケーブルの敷設作業と成端処理について概説します.
  1. 必要なもの(材料/工具)
  2. 計画をたてる
  3. 作業手順
  4. 作業手順(ケーブル布設)
  5. 作業手順(成端)
  6. トラブル

必要なもの(材料/工具)

  1. UTP ケーブル :
  2. RJ-45 コネクタ: 単線用と撚線用があります.
    通常の布設には単線を用います. 単線の方が性能が良いようです. 練習や失敗も見込んで多めに買っておきます. ロードバーを使うタイプの方が作業が確実ですがあまり出回っていません.
    カテゴリ 6e 用に末端が千鳥配置になったものもあり, コネクタでの干渉を減らせます.
  3. かしめ工具 : 3000-7000円. プラスチック製の安物を使うと圧着に失敗します. しっかりしたものを買いましょう. たいていは電話用の6ピンコネクタ(RJ-11)の圧着もできるようになっています.
    シールド線を使う場合は, シールドのアース処理もできる工具を使います.
  4. コンセント : ついでにコンセントも紹介しておきます. 110ブロックモジュラージャックは通常は専用の圧接工具が必要ですが, 圧接工具がなくても末端処理が出来るものがあります. 松下電工NR31309(レバー式成端)はレバーを押すだけで成端可能. 専用工具は不要です. 単価で千円程度. 壁に4口もしくは6口のパネルさえ設置しておけば,後はスルスルとケーブルを通すだけ.
  5. 外皮むき(ジャケットストリッパー) : 500-1000円. あると便利. カッターでも可.
  6. ニッパ : 切れ味が良い良質のもの. 鉄線などは切らずに,銅線専用にして下さい. (僕は UTP の芯線を切りそろえるときは切れ味の良いハサミで切っています. 推奨はしませんが...)
  7. ケーブルテスタ : 3000円-1,000,000円. 導通試験程度の簡単なものでもあれば安心できる. 幹線,やり直しが困難な部分では TSB-67 レベルII の性能要件をテストすることが望ましい. 検査項目は ワイヤマップ, 長さ, 近接漏話, 減衰, 減衰対クロストーク比, インピーダンス, ループ抵抗, ノイズ 等.
    布設してある, 古いケーブルの調査にも使えるので, 1台は持っておくと良い.
  8. 巻尺 : ケーブル長の確認.
  9. 定規 : 計画図の作図. コネクタ処理の確認.
  10. ドライバー : コンセントの飾り板, 天井板を外すとか...
  11. ドリル : 壁,天井に穴をあける場合.
  12. 脚立 : 天井裏の敷設の場合.
  13. 棒 : 罠を外す...ではなくて狭い場所にケーブルを通す. 釣竿とか.
  14. ライト:手もとを照らす. 天井裏の敷設の場合.
  15. 帽子,防塵眼鏡:天井裏の敷設の場合.
  16. 手袋:薄手の革手袋. 軍手は細かい銅線の屑などが刺さります. 職人さんの店などで購入すると 300〜500円程度
  17. 結束バンド:ケーブルの対撚りを崩さないように, 締めつけの強さに注意. 100均て購入しよう.
  18. モール(配線カバー):露出部分の処理. 床を這わせる場合には足を引っかけないようにカバーする.
  19. 配管を通す場合, 通線器を使いますがその代わりに....
    弾力のあるステンレスの針金を使う.
    ビニールのひも(細い軽いひも)の先にティッシュを取り付けて, 配管に入れて反対側から掃除機で引っ張れば通線器無しで線をとおせる.
  20. 身軽な人 : 天井裏の敷設の場合.
    動作や狭いところでの身のこなしという意味もあるが, それ以前に, 天井を踏み抜かない というのが重要. 金属の桟を使った天井でも体重が思いと桟が歪む.
    天井裏では桟の間隔をカバーする板を置いて作業すると良い.
    子犬でも良いという話も...っていうか, "工具" なのか?

計画をたてる

  1. 必要な性能を想定し, 規格(10/100/1000BASE)を選択します. 後で引き直すのは面倒なので良質の(速い規格の)ケーブルにしましょう. Cat.6e を推奨.
  2. ケーブルの敷設計画を立て, 必要な長さを決めます. 適当に余裕も見込んで下さい. どこを,どういう手順でケーブルを通してゆくか決めます.
  3. HUB の構成(機種, トポロジ, 設置場所等)を決めます.
  4. 必要な機材/材料を購入.
  5. ケーブルにラベリングします. 適宜, 色分けも利用します. 敷設した状態でケーブルのラベルを確認できるように考慮します.
  6. ケーブルの記録を文書化して残しましょう. 接続の図面も必要です. ケーブルのラベリングも記録します.
  7. ケーブル延長:最大 100m. 特性の劣化も含めて 80m を上限とすることを推奨します. 長くなりそうなら SW-HUB(ブリッジ)で中継します. この目的ではリピータ HUB ではだめ.
    短いパッチケーブルでは問題ありませんが, 10m 前後でケーブルの共振からエラーが増える事があるようです. この場合 15-20m程度の長めのケーブルを使います.
    なぜ 10m なのか?: 真空中での光の速度は 3x10^8[m/sec] です. ケーブル中では媒体や絶縁体の屈折率の影響があるので 2x10^8[m/sec] 程度の速度になります. 10MHz のときの波長は 20m なので, 10m だと半波長で共振します. 100MHz では 2m, 1GHz では 20cm. Ethernet の規格は周波数とはちょっと違うが, ほぼこのオーダーで変化する信号がケーブルを通る事になる. 共振の問題がでるのもこの程度の長さのとき.
  8. 室内に出る部分で壁や天井裏に10m程度の余裕を作っておくのが良いでしょう.
  9. 数年後には, 劣化した端を切り取って, 成端処理をやり直すことになるので, 少し長めにしておきます.

作業手順(ケーブル布設)

要点:
  1. よじれを避ける
  2. ケーブルを強く引っ張らない
  3. 曲げも緩やかに
  4. 結束も緩く
  5. LAN ケーブル, 電源ケーブルを長距離並行して布設しない
  6. ノイズ源から離す
  7. LAN ケーブルを整然とまとめる. 束ねたり巻いたりしない.

  1. ケーブルの作業は丁寧に行います. 特に高速の回線では注意. ちょっとしたケーブルの乱れが信号の劣化につながってしまいます. 1000BASE の信号に相当する 1GHz の電波の波長は 30cm です. 7cm 程度の構造が 1/4波長のアンテナや障害物として効率良く働く事を意味します.
  2. ケーブルを切り, 捻れを解きます.
    捻れがあるとケーブルを敷設するときに よじれ瘤ができて折れ,性能が劣化することがあります.
    箱から引き出すとそのままで捩れが無い状態になるように工夫されている製品もあります.
  3. 固定や敷設作業のストレスに注意します.
    1. 適当な間隔で結束バンド(ケーブルタイ)で固定します. このとき強く締めつけると対よりが崩れて,性能が劣化します. 擦れや締め付けによる圧縮を受けないように注意します.
    2. 張力:短時間なら110N(11kg). 敷設後(固定時)力がかかる使いかたは避ける.
    3. 曲げ半径:25mm以上. ケーブル延線時(布設中)ケーブル外径の8倍以上. ケーブル固定時(布設後)ケーブル外径の4倍以上. (JIS X5150「構内情報配線システム」での推奨値)
  4. ノイズ元から離す: 蛍光灯は高周波ノイズが多いので 13cm 程度離す. 電力線からは 13cm(2kVA以下), 31cm(2-5kVA), 61cm(5kVA以上) の距離を保つようにする(TIA/EIA-569推奨値).
    接近する場合でも, 平行に長く引きまわす事は避けます.
  5. 構内配線は整然と配線します. 雑然と天井裏をのたくらせてるのはダメです. 余ったケーブルを巻くのも避けます.

作業手順(成端)

  1. ケーブルを敷設してから成端処理します.
  2. 壁コンセント(110ブロックモジュラージャック)に出す場合, 通常は専用の圧接工具が必要です. 圧接工具がなくても末端処理が出来るものがあります. 松下電工NR31309(レバー式成端)はレバーを押すだけで成端可能.
  3. RJ-45 コネクタにする場合, ケーブルをRJ-45コネクタキャップに通します.
  4. 30mm 程度ツイスト線が出るように被覆を剥きます. 橙,緑,青,茶の4組のツイスト線が出て来ます. 各々の撚線をよく見ると, [橙] と [白線入り橙] のように2本に区別がついています.
  5. コネクタピンのアサイン を頭の方(正面)から見た図. (引っかけが無い側から見て一番左が一番ピンです.)
    RJ-45
         ______
    _____|    |_____
    |               |
     | | | | | | | |
     1 2 3 4 5 6 7 8
    
  6. 結線には T-568A と T-568B があります. ストレートケーブルでは両端を次(T-568A)の結線にします.
    ストレート結線用(T-568A)
    1:白-橙 2:橙 3:白-緑 4:青 5:白-青 6:緑 7:白-茶 8:茶
    
    3 と 6 がペアになっている点に注意してください.
    被覆から出た部分が上のように平行に揃うように線を整形します. このとき, 被覆の中の部分の撚りを戻さないように注意して下さい. 特性を維持するためツイストのよりを戻す長さは 1/2インチ(12.7mm)未満と規定されています. また, 被覆をしっかり押えていないと 芯が被覆の中に引っ込んでしまう事があります. よりを戻した8心の個々の絶縁体を剥がす必要はありません.
  7. クロスケーブルを作る場合は, ケーブルの一方は上(T-568A)のように作り, もう一方を次(T-568B)のように作ります.
    クロス結線用(T-568B)
    1:白-緑 2:緑 3:白-橙 4:青 5:白-青 6:橙 7:白-茶 8:茶
    
    3 と 6 がペアになっている点に注意してください.
    パッチケーブルは良いですが, 長いケーブルでのクロス結線は混乱の元になるので避ける方が良いです. 性能の劣化が気になるかも知れませんが, 延長コネクタに短いクロスケーブルを差します. (クロスアダプタとして市販されています.)
    通常は HUB の自動認識(auto-MDIX)があるので, クロスケーブルを使わない方ようです.
  8. きれいに整形できたら1/2インチ(12.7mm)の長さに切りそろえます. シールドつきの場合, シールド線は別にしておきます.
  9. 1000BASE のイーサネットでは 4対全てに信号が乗ります. 全ての結線が正しく行われるように注意して下さい.
  10. RJ-45 コネクタに差します. 差し込んだ線の順に誤りが無いか再確認します.
    コネクタの頭の方から見て芯が揃って見えているか (しっかりささっているか)確認します.
    シールドつきの場合シールド線がプラグの上側(引っかけがある側)にくるようにします.
  11. かしめ工具で圧着します. しっかりと.
  12. コネクタキャップをRJ-45コネクタに被せます.
  13. ケーブルテスタがあれば, 両端を加工してから試験します.

トラブル

  1. 単純な勘違い: HUB, ルータ, PC, などの電源が入っていない. ケーブルのコネクタが刺さっていない/緩んでいる/刺すポートが違う.
  2. 施工不良: コネクタ処理の誤り. ケーブルを通す経路が不適切. ケーブルのキンク(捩れ瘤). 曲げ半径が小さい. 引っ張り. 締めつけ.
  3. 接続規格に違反: ケーブルの延長距離を越えている. リピータ HUBの段数の違反. ケーブルタイプの誤り. (カテゴリ5が必要な部分にカテゴリ3を使う,電話線で代用等)
  4. 管理の不在: ケーブルの記録が引き継がれていない/文書化されていない. ケーブルにマーキングされていない. 現状が把握できないため敷設, 移転, 追加, 変更, 補修 の判断に問題がでる.
  5. ネットワーク構成/管理のミス: 接続にループができる. 導入した機器の性能に問題がある. ルータ設定等の誤り. クロス/ストレートのケーブル選択の誤り. Half/Full Duplex 接続の不整合. 10/100/1000BASE の接続の不整合.
  6. ノイズ: 蛍光灯. モーター. 動力線. 大電力を扱う実験室の近辺は注意.
  7. ケーブルの劣化: 埃. 踏みつけ. 鼠害(噛み砕く). 腐食.

    埃や湿気が多い環境では, 端子が劣化するので, 数年毎に端を切り落として再加工する. 敷設時にその分を見込んでおくこと.

  8. 機器の不良: HUB ポートの動作不良. HUB の暴走. NIC の破損.
  9. 接続する機器: OSのネットワークドライバの動作不良. 設定の不良(IP アドレス, ネットマスク, ブロードキャストアドレス, デフォルトルート など).
  10. 計画の不備: 帯域が足りない. ケーブル,コネクタなどの資材不足. ケーブルが短い. HUB のポートが足りない.

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