解析学 VII
(2単位)
Analysis VII
担当教官
配当年次
開講学期
教授 宮川 鉄朗
3
後期
授業のテーマと目標
不定積分を微分すると被積分関数が得られるというのがいわゆる微積分の 基本公式の主張するところである. この公式は被積分関数が連続関数である 場合には初等的な微積分の理論の中で簡単に証明される. しかし, 単に被積分関数が可積分という仮定だけではこの公式が 成り立たない例がある. ルベーグは彼の積分論の枠組みの中でこの公式が ほとんど至る所成り立つための必要十分条件を求めることに成功した. その後理論は精密かつ抽象的になり, ある測度を別の測度で「微分する」という 概念に到達した.
本講義では, まずこの抽象的な微分を理解するための加法的集合関数の理論を 解説する. ここで得られるラドン-ニコディムの定理は, 関数解析や確率論 などへの応用の広い重要な定理である. 抽象論を学んだ上で, ルベーグの 考察対象であったところの微積分の基本公式について解説する.
時間に余裕があれば, ルベーグ積分の応用としての L
2
, L
p
等の関数空間に関する基礎的な知識について講義する. これらの空間は, 線形空間であると同時に完備距離空間でもある. 解析学における完備性の重要性は微分積分学以来お馴染みの 事実であるが, 関数空間においても事情は変わらない. そうした完備性が, 実はルベーグの積分論で保証されるのである.
授業の内容と計画(予定)
1. 加法的集合関数
2. 絶対連続集合関数と特異集合関数
3. 絶対連続集合関数の積分表示
4. 直線上の関数の微分と積分の関係
5. 関数空間 L
p
(p:1 以上)
履修上の注意
先行科目: 基礎解析 I, II, 解析学 III--V, 数学要論 I, II・同演習
後行科目: 関数解析学 I, 確率論 II
成績評価方法
学期末試験の結果による.
教科書、参考書
伊藤清三著 ルベーグ積分入門 (裳華房)
鶴見 茂著 測度と積分(理工学社)
学生へのメッセージ
目標は単純であるが, 個々の証明は極めて技巧的である. 余り細部に とらわれることなく, ゆったりと理解して欲しい.
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