数学要論 I (2単位)
Elements of Mathematics I
担当教官 配当年次 開講学期
助教授 廣森 勝久 後期

授業のテーマと目標

いわゆる素朴な集合論の初歩を扱う. 現在,集合の考えは数学を記述 するための最も基礎的な概念となっており,数学を専攻する諸君に とって, これから専門課程の授業を理解するため, 集合論は不可欠の素養である.
集合とは「ものの集まり」であり, 数, 図形, 数列, 関数, ベクトル, 行列など, 数学で扱うあらゆるものがその構成要素となる. 関数やベクトルを個別 に考えるのでなく, 一定の条件をみたす対象を全体としてとらえた上で, その集合にいろいろの構造(要素の相互関係)を規定してゆくのが現代数 学の一般的方法である. また, 集合論は「無限」を論じ, ものの個数の一般 化として「濃度」の概念を導入する. 無限の扱いでは, 奇妙に思える事実も 生じるが, それが論理の必然的帰結である. 集合はごく素朴な考えであり, 直感的に当然と思えることも多いが, それらを含めて正確な論理で確かめ てゆかねばならない.
この授業では, 以上のような集合論の基本的な概念・手法に慣れてもらう とともに, 数学的な論証の方法も身につけてもらうことを目標にする.
授業の内容と計画(予定)

1. 集合と写像:集合と包含関係, 命題と論理, 集合の演算(和集合, 共通集合, 差集合, 直積集合など), 写像, 全射と単射, 集合族と選出公理, 同値関係と類別
2. 順序と濃度:順序関係と順序集合, 極大条件と極小条件, 濃度, 可算集合, 連続体, 整列集合, 超限帰納法, Zornの補題
履修上の注意

一般的・抽象的な議論は. 高校の数学, 受験数学と様相が違うので戸惑うことも あろうが, 実例もなるべく多く紹介し, また随時, 演習も行うので, 平常の努 力を怠らず, 現代数学の感覚になじんでほしい.
成績評価方法

期末試験に平常の演習も加味して評価する.
教科書、参考書

とくに教科書は定めないが, 「集合・位相」といったタイトルの気に入った 書物を 1 冊, 座右に置くことをすすめる (「位相」は要論 II で扱われる). 以下にその例をあげておくが, 最初のものは気楽な読み物なので, 一読 するとよいであろう.
参考書: 遠山啓著, 無限と連続, 岩波新書
参考書: 松坂和夫著, 集合・位相入門, 岩波書店
参考書: 彌永昌吉・彌永健一著, 集合と位相, 岩波書店
参考書: 内田伏一, 集合と位相, 裳華房
学生へのメッセージ

この授業に限ったことではないが, 決して受け身でなく, ものごとを主体的に考えて, なぜそうなるのかを常に熟慮してほしい.

戻る