第2回(2003年度)解析学賞

受賞者

業績題目

泉正己(京都大学大学院理学研究科)

作用素環の部分環と群作用の研究

福島正俊(関西大学工学部)

ディリクレ形式とマルコフ過程の研究

宮嶋公夫(鹿児島大学理学部)

強擬凸 CR 構造と孤立特異点の変形理論

【選考委員会構成】
大春慎之介,織田孝幸(理事会推薦),川島秀一,重川一郎,竹村彰通,野口潤次郎(委員長),真島秀行,綿谷安男


受賞者

宮嶋公夫(鹿児島大学理学部)

業績題目

強擬凸 CR 構造と孤立特異点の変形理論

受賞理由

1975年日本数学会総合講演において,倉西正武氏により提唱された「複素3次元以上の正規孤立特異点芽の変形の versal 族をその境界上の強擬凸 CR 構造の変形を通じて構成せよ」という問題は宮嶋氏により,最終的に解決された.複素2次元の場合は,実3次元 CR 多様体が高次元の場合と異なる複雑さを持つために予想される困難により倉西の問題からは除外されていた.宮嶋氏はこの困難を克服し,複素2次元の場合をも含めて問題の解決に成功した.
以下に宮嶋氏の主要な業績をあげる.

(a)

正規孤立特異点芽の変形理論を境界上の強擬凸 CR 構造の埋め込み安定的変形理論として理論化した.

(b)

通常の強擬凸 CR 解析学では versal 族の構成はうまく行かない.宮嶋氏は versal 族構成に必要な修正 CR 解析学を確立した.

(c)

実3次元 CR 多様体上の解析学を確立し,複素2次元孤立特異点も取り扱うことに成功した.

(d)

特異点の変形とその境界の CR 構造の変形との間にはギャップがあり,これが問題を複雑にしていた.これを宮嶋氏は,新たに「安定埋め込み」の概念を導入することにより解決した.さらに具体的な正規孤立特異点の変形に対して CR 解析学の研究に基づいた研究を行っており,特異点の変形理論へその境界からアプローチする実際的な応用の道を切り開いた.

宮嶋氏のこれら一連の仕事は世界的に高い評価と大きな注目を得ている.これらの理由から,同氏の業績は解析学受賞に相応しいものである.