第8回(2009年度)解析学賞
受賞者 |
業績題目 |
西谷達雄(大阪大学大学院理学研究科) |
双曲型偏微分方程式の初期値問題に関する適切性の研究 |
相川弘明(北海道大学大学院理学研究院) |
複雑領域上のポテンシャル論の研究 |
小川卓克(東北大学大学院理学研究科) |
実解析的手法による臨界型非線形偏微分方程式の研究 |
【選考委員会構成】
尾畑伸明,小磯深幸(委員会担当理事),小薗英雄,小谷眞一(委員長),柴田良弘,神保雅一,平地健吾,宮地晶彦
受賞者 |
西谷達雄(大阪大学大学院理学研究科) |
業績題目 |
双曲型偏微分方程式の初期値問題に関する適切性の研究 |
受賞理由 |
偏微分作用素は対応する特性方程式の幾何的な性質から楕円型,放物型,双曲型などに分類される.偏微分作用素に対する初期値問題が $C^{\infty}$ な解を一意的にもつとき $C^{\infty}$ 適切であるという.時間に関して未来にも過去にも $C^{\infty}$ 適切であれば偏微分作用素は双曲型でなくてはならないことは,Lax-Mizohata の定理として知られている.問題は双曲型方程式の $C^{\infty}$ 適切性である.定数係数作用素や,対称双曲系,Strictly hyperbolic operator に対する理論は1970年初頭までに完成した.Strictly hyperbolic operator でない場合について西谷氏は長年に亘り顕著な業績をあげてこられた.実際 Strictly hyperbolic operator でない場合の最初の顕著な結果は1970年代後半の Ivrii-Petkov による強双曲型ならば効果的双曲型であるという結果である.ここで強双曲型とは任意の低階項をつけても $C^{\infty}$ 適切になる作用素をいい,効果的双曲型とは主シンボルの幾何的な特徴付けの一つである.1980年代に岩崎氏と西谷氏により全く異なる方法により効果的双曲型ならば強双曲型であることが示された.これは双曲型方程式の適切性に関する基本命題である. |