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Risa/Asir ドリル

高山信毅, 野呂正行

2002年(平成14年), 10月3日 版: コメントは
takayama@math.kobe-u.ac.jp または noro@math.kobe-u.ac.jp まで

はじめに

Risa/Asir ドリルは, 著者(T)が徳島大学総合科学部および神戸大学理学部 で数学系の学生におこなってきた計算機プログラミングの入門講義および 演習をたたきだいにして書いた本である. この講義ではさまざまな言語 C, Pascal, 8086 の機械語, Ubasic, sm1, Mathematica 等を用いて実習してきたが, 利用するプログラム言語は異なっても 基本的内容は同じであった. ちなみに本書の原稿のおおもとは, 1991 年に著者(T)が学生に配布した, Mathematica の入門テキストである.

2000 年の秋に著者(N)が富士通研究所より神戸大学へ転職してきたのを 機会に, 著者(T)はこの年の計算機プログラミングの入門講義および演習 を富士通研究所で著者(N)が開発にたづさわってきた数式処理システム Risa/Asir を用いておこなうことにした. Risa/Asir は研究用システムとしてすぐれた点を多くもつシステムであったが, 教育用途に利用するにはいろいろと不満な点もあった. 著者(N)は, 著者(T)およびいろいろと珍奇なことをやってくれる学生 にのせられて Risa/Asir を教育用途にも使えるよういろいろと改造した. 実習室用に CDROM をいれるだけで Windows 2000 で起動できる Asir, 初心者にやさしい入力エラーの取扱い, ファイル IO, 2 次元簡易グラフィックス, さらには 教育用途のために, メモリを直接読み書きする peek, poke まで付けた (ちなみにこれはセキュリティホールになるので普通は利用できない). この Risa/Asir をつかった実習は著者(T)がおこなった 他のいろいろな言語による実習のなかでも成功の部類に はいるものであり, 本として出版してみようという気になったのである.

さて前にもいったようにこの講義および演習は数学科の学生向けであった. 講義の目的は以下のとおりである (目標はそもそもなかなか達成できないものであるが...).

  1. 高校数学 A, B, C の計算機に関する部分を教えられるような最低限の知識と 技術を身につける.
  2. 数学科の学生は卒業後, 計算機ソフトウエア関連の職業につくことが多いが, その基礎となるような計算機科学の全体的な基礎知識を得る.
  3. 計算数学が現代の科学技術のなかでどのように利用されているかおぼろげに 理解してもらう. また計算数学が数学のなかの一つの研究分野であることを理解してもらい, とくに計算代数への入門を目指す.
  4. 数学を活用する仕事(含む数学者)についた場合に, 数式処理システム等を自由に使えるようにする.

この本では講義の内容に加えてさらに 数学的アルゴリズムに関する特論的な内容や, Asir のライブラリプログラムを書くための方法, Asir に C のプログラムを組み込むための方法, 計算数学のシステムをたがいに接続する実験プロジェクトで ある, OpenXM を利用した分散計算法など, オープンソースソフトとしてリスタートした, Risa/Asir のための情報も加筆した. この本が Risa/Asir の利用者, 開発参加者にも役立つことを 願っている.

なお, この本は数学科の学生向けの講義をもとに書かれたが, 一部分を除き大学理系の微分積分学, 線形代数学程度の知識が あれば十分理解可能である. 実際本書は工学系の学生や, 高校生向けに利用したことも ある. この本がさまざまな人にとり有益であることを願っている.

2002年(平成14年)10月, 著者





Nobuki Takayama 平成15年9月12日